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なぜ選べない?選択肢が多いと不幸になる「選択のパラドックス」の心理学

こんにちは。学びを楽しむナビゲーターのまそらです。

私たちの日常は、朝の何気ない行動から、選択の積み重ねでできています。

選択肢が多いことは「自由で嬉しい」はずなのに、なぜか「つかれる」「選べない」そんな経験、ありませんか?

今日は、選ぶほど疲れてしまうという逆説的な心理現象、「選択のパラドックス」を有名な実験事例を交えて紹介しますね。

目次

たくさん選択肢があるのは嬉しい、は幻想?

例えば、洋服を買いに行ったとき、ケーキを買いに行ったときなど、何かを買いに行ったとき、ずらっと並ぶ商品を見てワクワクした経験があるんじゃないかなと思います。

「どれにしようかな」とたくさんの選択肢から自由に選べるのは嬉しいことですよね。

でも実はそうじゃない、ということがわかっているんです。

選択のパラドックス(The Paradox of Choice)とは?

私たちは、選択肢がたくさんある方が、自由に選べて満足度が高いと考えがちです。

でも実は、多すぎる選択肢は私たちには負担である、ことがわかっています。

選択肢が増えるほど嬉しいこと、と思わせきや、選択肢が増えるほど私たちは意思決定が難しくなります。

脳は無意識に「最適な答え」を探そう!とフル稼働し、その結果、私たちは気づかぬうちに疲れ、行動をストップし、そして最終的には満足度まで下がってしまいます

この逆説的な心理現象を「選択のパラドックス」と言い、この概念は、アメリカの心理学者バリー・シュワルツが提唱しました。

物質的にも恵まれ、進路も自分で決めることができる(決めなくてはいけない)、そんな現代社会の「自由な選択」の裏に潜む、見過ごされがちな心の負担がここにはあります。

実証実験:コロンビア大学「ジャムの法則」の衝撃

この実験は選択のパラドックスを証明する有名なもので、心理学者のシーナ・アイエンガーマーク・レパーによって2000年に実施されました。

目的は、選択肢の数が人々の購買行動や満足度にどう影響するかを調べることでした。

実験の場所と設定

実験は、アメリカの高級食料品店に設置された試食コーナーで行われました。

研究チームは、ジャムの陳列数を変える二つの条件を設定しました。

  1. 多数の選択肢の条件: 試食用に24種類のジャムを陳列。
  2. 少数の選択肢の条件: 試食用に6種類のジャムを陳列。

研究員が買い物客に声をかけ、ジャムの試食をすすめ、割引クーポンを渡しました。

実験結果の詳細

実験で得られた結果は、以下の通りです。

  1. 試食に立ち寄った客の割合:
    • 24種類のジャムが並んでいた場合、試食に立ち止まった客は全体の約60%。
    • 6種類のジャムが並んでいた場合、立ち止まった客は全体の約40%。
    • この結果から、多くの選択肢は、人々の注意を引き、誘引する効果があることが分かりました。
  2. 最終的にジャムを購入した客の割合:
    • 24種類のジャムを試食した客のうち、実際に最終的にジャムを購入した客は、3%。
    • 6種類のジャムを試食した客のうち、最終的に購入した客は、30%。
    • 選択肢が少ないほうが、多い方に比べ、10倍も購入客が多いという結果となりました。

結論

この実験は、選択肢が多すぎると、人は情報処理の負担を感じ、最良の選択をすることへの不安(後悔したくないという気持ち)が高まることを示しました。

その結果、決定を避けようとして「何も買わない」という行動につながり、購買率が著しく低下することがわかりました。

選択肢の多さは顧客を惹きつける効果が確かにあります。

しかし、最終的な行動(購入)においては、適度に絞られた選択肢の方が圧倒的に効果あるということが明らかになりました。

日常に隠れた「パラドックス」事例

ビジネスの世界でも、この選択肢のパラドックスは利用され私たちの選択は誘導されています。

「選択のパラドックス」へのAI活用

有名な例は、ストリーミングサービスのNetflix

膨大な数の映画やテレビ番組を提供し、増え続けています。

視聴者は、選択肢が多すぎて「何を観るか決めるのに時間をかけすぎ、結果として何も決めれずに時間を浪費してしまう」という現象が起きていたそうです。

これを解決するために、NetflixはAIを利用した推薦アルゴリズムを開発。

ユーザーの視聴履歴や評価を基に個々のユーザーに合ったコンテンツを推薦することで、意図的に選択肢を絞り込んでいます。

同様のことは、AmazonなどECサイトでも行われています。


「選択のパラドックス」が活かされた集客・販売戦略

ウェブサイトやマーケティングにおいて、購入率や登録率を向上させる強力な戦略としても活用されています。

1. 購買行動を促す「選択肢の絞り込み」

「ジャムの法則」の教訓を活かし、顧客に提示する選択肢をある程度限定しています。

商品ラインナップ

提供する商品やサービスのプランを3〜4種類に限定して提示(例:松竹梅プラン)。

洋服はカラーバリエーションは定番色(白、紺、ベージュ)+流行色の3~5種類程度にしぼって販売。

サイト導線

ブログ内の関連記事への導線や、特典(無料レポートなど)の紹介は、最も推したいものを1つだけ大きく提示。

2. ユーザーの決断エネルギーを温存する設計

Webサイトでも疲労によって行動を止めてしまわないよう考えられているところも多いです。

Webサイトのナビゲーション

ヘッダーメニューの項目を限定し、ユーザーが「どこに行けばいいか」を迷う状況を避けます。

Yahoo!もトップに表示されるニュースもずらっとたくさん並んでいません。

これまでの閲覧記録をもとに、個人に合ったものが限定して表示されています。

登録フォーム

メールマガジンや資料請求のフォームは、入力項目を最小限(メールアドレスのみなど)に抑え、途中で離脱するのを防ぐ工夫をされているところが多いです。

個人情報を多く開示しないで済む、心理的な安心にもつながり、登録のハードルを下げています。

3. 推進したい選択肢への誘導

ユーザーの脳のエネルギーを、収益に繋がる行動へ集中させるよう工夫されています。

「おすすめ」の強調

店舗に並んだ製品を見ていると「一番人気」「初心者向け」「本日のおすすめ」といったポップをよく見かけますよね。

文字や色を使い、他の選択肢より際立たせ意識を集中させることで、選択肢を狭める効果があります。

比較要素の排除

料金ページなどでは、細かい機能比較表やオプション選択の表示をあえてなくしています。

「購入ボタンを押した後」に表示することで、まずは「購入」という大きな決断に集中させます。


このように私たちの選択、意思決定は、私たちが思う以上に誘導されています。

ぜひ日常を見回してみてください。

選択のパラドックスを逆手に取った戦略があちこちに垣間見えて面白いですよ。

【まとめ】選択の自由をより自由に

一見すばらしい、たくさんの選択肢を前にした「選択の自由」。

実は多くの「心理的な負担」を私たちは強いられています。

しかし、知っているとその負担を軽減することもできますよね!

毎朝のご飯に悩むなら、ルーティン化してしまう。

洋服で悩むなら、数を減らす、仕事着はこれ!など制服化もおすすめです。

自由であるはずの「選択」が負担にならないよう、意識して工夫してみましょう。

不思議といつもより疲れがなかったり、他の大事な選択に集中しやすくなるかなと思います。

また、多くの企業はこのパラドックスを集客や商品選択にすでに利用しています。

私たちは与えられた選択肢の中から選ぶだけではなく、「自分の基準で選ぶ」自由や、「選ばない」自由も持っていることを覚えておいてくださいね。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!

「とある心理学」として、これからも、とある日常に隠れたとある瞬間の面白くて使える心理学を楽しくしていきますね。

関連記事:「つかれないシンプルな選択方法」は、こちらの記事をご参照ください。

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